トランペットと一言で言っても、実はいろいろな種類があります。
私自身、この記事を書くにあたって、こんなに種類があることにビックリしたのですが、トランペット初心者の方は特に最初に買うトランペットを、どの種類のものを選ぶべきか、迷う人もいると思います。
そこで今回は、そんな種類豊富なトランペットを、できるだけ分かりやすくまとめてみました。
あなたのトランペット選びの参考にしてください。
Contents
トランペットの種類を、より深く理解するために
トランペットの種類のお話に入る前に、音楽の基本となる
「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」
に、ついてのお話しです。
トランペットの理解をより深めるために必要なので、ぜひ読んでください。
「ド」=「C」?!
音楽を知らない人でも、「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」は聞いたことがあると思います。音階を表したものです。
「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」を、分かりやすくピアノの鍵盤で見てみると、下の画像のようになります。

鍵盤に「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」と降ってある下に、アルファベットが書かれてあるのが分かると思います。
実は、この「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」はイタリア語表記のもので、下の「C D E F…」は、英語表記で表したものになります。つまり
Cとは、ドの音を英語で表したものなのです。
ギターなどのコード譜で、CとかDとか書かれているのを見たことがあると思いますが、これもC(ド)から始まる音階、D(レ)から始まる音階の和音を、意味しているのです。
トランペットの「ド」は、「ド」ではない!?
ここからが重要なのですが
一般的なトランペットで出す「ド」の音は、「ド」の音ではありません。
どういうことか?こんがらがっている人も、多いと思います。
下の画像を、ご覧ください。

このように、トランペットで「ド」の音を出すと、ピアノの「ド(C)」よりも1音低い
「シ♭(フラット)」になるのです。
「シ」は、英語表記で「B」でした。
つまり、トランペットの「ド」は、ピアノの鍵盤の「シ(B)」よりも半音低い黒鍵(音楽用語で、半音低くすることを、フラット=♭と呼びます)、シ♭(B♭)となる訳です。
トランペットの「ド」は、シ♭(B♭)になるので、トランペットでの「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」も、実際には
「シ♭ ド レ ミ♭ ファ ソ ラ シ♭」という、シ♭から始まる音階になるのです。
なので、ピアノの「ド(C)」をトランペットで出す場合は
「レ」の音を出さないといけない訳です。
このように基準となる音階が、ピアノの音階とは別の音階に設定されている楽器のことを
移調楽器と呼びます。
移調楽器はトランペットの他に、サックスやクラリネットなどがあります。
こんなにもあった!トランペットの種類
音楽の基本となる「ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド」、移調楽器についてお話ししました。
ここからは、意外と多くの種類がある、トランペットの種類をお話ししていきます。
B♭管トランペット
トランペット、1つ目の種類はB♭管のトランペットです。
先ほどお話ししたように、基準となる音階がB♭に設定されているもので、オーケストラや吹奏楽、ジャズやポップスなど、最も一般的に使われています。
この記事のアイキャッチ画像の、2人のトランペット奏者が持っている楽器も、B♭管です。
トランペット=B♭管と思ってもらって、とりあえず問題ありません。
後でご紹介するC管と区別して、B♭管(べーかん)と呼ばれることも多いです。
このブログでは、基本的にトランペット=B♭管として進めています。
C管トランペット
トランペットで、B♭管の次にポピュラーなのが、このC管トランペットです。
C管トランペットは、基準となる音階がピアノと同じCになります。
主に、クラシック音楽の演奏で使われることが多く、クラシックのトランペット奏者の多くは、このC管トランペットを使っています。
B♭管に比べて、主管が短くなっているのが特徴で、その分音色が華やかになっています。
先ほどのB♭管と区別して、ドイツ語読みで「つぇーかん」と呼ぶことが多いです。
C管トランペットの演奏は、こちらをどうぞ。
E♭管トランペット
一部のクラシックの曲で使われるのが、このE♭管トランペットです。
演奏は、こちらをどうぞ。
基準となる音階が、「ミ♭(E♭)」に設定されているトランペットで、C管よりもさらに管が短くなっているのが特徴です。
音色も、どこか品のある甘美なものになっています。
コルネット
金管バンドで、必ずと言って良いほど見かけるのが、このコルネットです。
管の長さもトランペットと同じで、パッと見ではトランペットと区別がしづらいと思います。
トランペットと見比べてみると分かるのですが、1番ピストンからベルに向かって伸びる管の太くなり始めるのが、トランペットに比べて早くなって(ピストン側になって)いるのが特徴です。
管の太くなるのが早い分、音色がトランペットに比べて柔らかくなっています。
クラシックのオーケストラや吹奏楽などでも、コルネットで演奏するよう指示されている曲があり、ジャズでもコルネットを好んで演奏する奏者がいます。
コルネットの演奏は、こちらからどうぞ。
フリューゲルホルン
「ホルン」という名前が付いていますが、フリューゲルホルンはトランペットの種類の1つに、しっかり入ります。
コルネットと同じく管の長さはトランペットと一緒ですが、管の太くなるのが、コルネットよりもさらに早くなっているので、音色がさらに柔らかくなっているのが特徴です。
コルネットと同じで、金管バンドには必ずフリューゲルホルン奏者がいて、特にビッグバンド(ジャズのオーケストラ)では、柔らかい音色を活かして
バラード曲などでフリューゲルホルンへ持ち替えることが多いです。
トランペットに比べて、縦にも横にも1回りくらい大きくなっているからか
高音が出にくくなっているのが特徴です。
余談ですがフリューゲルホルンは、サックスの考案者アドルフ・サックスによって考案されたと言われていて
その歴史もトランペットの種類の中では、比較的浅いです。
フリューゲルホルンの演奏は、こちらをどうぞ。
ピッコロ・トランペット
ピッコロは、イタリア語で「小さい」という意味です。
その言葉の通りに、B♭管よりも1オクターブ分管が短くなっていて
B♭管トランペットと同じ運指で、1オクターブ上の音が出るようになっています。
軽やかで高貴な音色を持っていて
バロック時代の音楽や、とても高い音域の曲を演奏するのに使われます。
ピッコロ・トランペットは、1オクターブ分短くなっているため
低い音を出すために、ピストンが4つになっているのが主流です。
ピッコロ・トランペットの演奏は、こちらをどうぞ。
ポケット・トランペット
「旅先などで、気軽に持ち運びができるトランペットが欲しい!」という方にとって、朗報とも言えるのが、このポケット・トランペットでしょうか。
管の長さは普通のトランペットと同じで、巻き方をコンパクトにした楽器です。
普通のトランペットと遜色のない音色を出すよう設計されているものもありますが、もともとが携帯版トランペットと言う位置づけなので
音色は普通のトランペットに比べると、やはり劣ってしまいます。
携帯する目的以外にも、体の小さい子供などには、持ちやすいポケット・トランペットの方が、吹きやすいと感じるかもしれません。
ポケット・トランペットの演奏は、こちらをどうぞ。
トライアンファル・トランペット
(参照元@pixabay)
画像のように、主管とベルの部分が長く伸びたトランペットです。主に、ファンファーレや歌劇などで使われます。
ベルの部分についたフックに、旗などを取り付けることができます。
複数の奏者が並んで、このトランペットで演奏する姿は、壮観ですよね。
まだまだある!?トランペットの種類
ここまでは、ピストンを押すことで息の流れを変える(音の高さを変える)種類のトランペットをご紹介しました。
おそらく、一般的にイメージするトランペットは、このピストン式のトランペットじゃないかと思いますが、実はトランペットは、ピストン式だけじゃないんです。
ロータリー・トランペット
多くの人がイメージする、ピストン式のトランペットの次にポピュラーなものが
ロータリー・トランペットです。
ロータリートランペットは、ピストンの上下によって息の流れが変わるピストン式に対して、ロータリーバルブの回転によって、息の流れが変わる仕組みになっています。
見た目も大きく違っていて、普通のトランペットを横に寝かせたような感じになって、持ち方もピストンを縦に構えるピストン式に対し
楽器を、横に寝かせたような持ち方になります。
ロータリートランペットは、ピストン式に比べて、管の巻き方が緩やかになっていて、ベルも全体的に大きめになっているのが特徴です。
そのため、音色が柔らかく、響きが豊かになっているので
オーケストラで、弦楽器などの音色に溶け込みやすいです。
基本的に、クラシック音楽以外ではめったに見かけないロータリー・トランペットですが
ジャズ奏者で、好んでロータリー・トランペットを使う人が、かなり少ないながらも、います。
しかも、ガチです。
これは、私も今まで知らなかったので、びっくりです。
さすが、何でもアリ!のジャズと、いったところでしょうか。
こちらの演奏は、そんなロータリートランペットで演奏したジャズの曲です。
変人?!ロータリー・トランペットで演奏するジャズ奏者
スライド・トランペット
今ではあまり見かけなくて
持っているだけで相当なトランペットマニアだと見られがちですが、実は
現在主流になっているトランペットが誕生する、前の時代から存在したトランペットの種類が
スライド・トランペットです。
スライドの抜き差しによって音の高さを変える種類のトランペットで、見た目が小さくなったトロンボーンに見えることから
「ソプラノ・トロンボーン」と呼ばれることもあります。
スライド式楽器の宿命でもありますが、音程が取りづらく、速いパッセージの曲を演奏するときなど、スライドを素早く動かす必要があるので、スライドポジションを覚えるのは必須ですし、音感の良さがかなり要求される楽器と言えます。
スライドトランペットの演奏は、こちらをどうぞ。
トランペットの祖先とも言える種類
最後にご紹介するのは、トランペットの祖先とも言える種類のトランペットです。
ビューグル
雄牛の角で作られた角笛がルーツと言われている、小型で管を巻いただけの、音の高さを変えるバルブなどを持たない楽器です。
バルブがないので、基本的に下から「ド ソ ド ミ ソ シ♭ ド」の音しか出せません。
昔は、軍隊での合図や号令などで使われたことから、軍隊ラッパ、信号ラッパ、単にラッパなどとも呼ばれます。その名残で、今でも陸・海・空軍での式典で使われているようです。
その他では、浜松市で毎年5月のゴールデンウイークに行われる浜松まつりでも、このビューグルが使われます。
浜松に住んでいる大学の同期の娘さんが、浜松まつりに参加したことがあって、それを見たのですが、幼稚園児や小学生の子たちを中心にラッパ隊を結成して、地域を練り歩いていました。
大人に混じって、小さな子たちがラッパを持って一生懸命演奏する姿に、とても感動した記憶があります。
バロック・トランペット
ビューグルと同じく、バルブなどを持たないトランペットで、主にバロック時代に使われていたトランペットです。
よりたくさんの音を出せるように、管体が長くなっているのが特徴です。
音程の調整がかなり難しく、管体の途中に開けられた小さな孔で、音程の調整を行います。
動画でも、指で孔をふさぐことで音程を変えているのが分かります。
ちなみに、バロック・トランペットの元となったナチュラル・トランペットという種類があるのですが
ナチュラル・トランペットには、この孔はありません。
ナチュラル・トランペットで音程の調整するには、かなりのテクニックを要するようで、習得するためには
教えてくれる先生のもとに、2年間住み込んで訓練を積む必要があるとか。
バロック・トランペットは、普通のトランペットよりも深い音色になっているのが特徴で、バッハなどのバロック時代の音楽を演奏するのに、あえてバロック・トランペットを使う人も多いです。
バロック・トランペットの名手!
結局、どの種類のトランペットを選んだら良いか?
ここまで、トランペットの種類をそれぞれご紹介してきましたが、最初に買うトランペットは、どの種類のトランペットを選んだら良いのか?
結論としては
- ピストントランペットで、クラシックなら7対3の割合で、B♭管かC管のどちらか。
- それ以外の音楽なら、B♭管の一択。
理由は、2つあります。
トランペットのシェア
1つめの理由は、何と言ってもトランペットのシェアです。
先ほどのトランペットの種類でもお話したように、トランペットで一番ポピュラーなのはB♭管です。それに合わせて
トランペット用の楽譜も、通常B♭の音階で書かれています。
これを、他のC管やE♭管などで演奏しようとすると、いちいちB♭の音階に変換させる必要があるのです。
これは、かなり面倒です。というより、トランペット初心者には無理だと思います。
詳しくは、別の記事でお話ししたいと思います。ここでは、「そうなんだ?」という程度で進めてください。
クラシックの場合は、C管を使う人も多いということで7対3という割合にしましたが、それでもやはり初めて買うトランペットは、B♭管をお勧めします。
音色と操作性
2つ目の理由は、ピストントランペットの音色と操作性です。
ピストントランペットは、他の種類のトランペットに比べて、明るく華やかな音色が特徴です。なので
主旋律やソロ向きと言えます。
トランペットは楽器の特性上、ソロやメロディを担当することが多いです。
どうせソロやメロディを演奏するなら、それに適した楽器で演奏したいですよね?
そして速いパッセージの曲を演奏するなら、やはりピストントランペットが演奏しやすいです。
スキルの低い初心者にとって、楽器の扱いやすさは重要なことです。
このような理由から、ピストントランペットをお勧めします。
まとめ
今回は、意外と種類が多いトランペットを、分かりやすくまとめてみました。
今回紹介しきれなかったトランペットはありますが、基本的にこの記事で紹介しているトランペットの種類を覚えていれば、問題ありません。
種類は多いですが、基本となる奏法は、どの種類のトランペットでも変わりません。
トランペット初心者の方は特に、早くトランペットの奏法を身に付けて、いろいろな種類のトランペットを試してみてください。
コルネットやフリューゲルホルンは「Saxhorn(サクスホルン/サクソルン)」といって、アドルフ・サックスによって発明・開発ないし改良された円錐型の金管楽器です。サキソフォンの親戚です。
コルネット・フリューゲルホルン・アルト/テナーホルン・バリトンホルン・ユーフォニアムがこの仲間です。
円筒型のトランペットとは管の構造や楽器の生い立ちからして仲間ではありません。「赤の他人」です。
ちなみに現在のトランペットに多用されている3本バルブはコルネットのマネです。
日本では未だにトランペットとコルネット(やフリューゲルホルン)とが混同されていることが少なくありません。